「においと味わいの不思議」という本を読んでみました。
ワインについての話が多くて、あっという間に読んでしまいました。
東大の東原和成先生のコラムは分かりやすくて面白い。
学ぶことの楽しさを、教えてくれる先生です。
また先生の本を読んでみたい。
醸造家の佐々木佳津子さん、只者ではない。
複雑なワインの匂いについての知識の量がすごくて、醸造家の独特な表現の仕方が難しかった。
京大の伏木亨先生は、おいしさを数字で表して、見えるようにするための研究をしているらしいです。
「美味しさは頭の中にある」など、とても印象に残る言葉が多くて、難しい話を丁寧にわかりやすく説明してあって、読みやすい。
今、伏木先生の本を読んでいるので、また、感想文を書きたいと思います。
最後の、ナビゲーターの鹿取みゆきさんは、ソムリエのこと、日本や海外のワイン業界のことを説明してくれていて、なかなか、広いようで狭いようで、複雑で独特な世界です。
どなたも、自分の仕事に情熱や誇りをもっているのが伝わってきました。
いやいや、日本の「蕎麦」だって、負けてません。
色々なそば料理を作ってみましたが、外国では、チーズをかけたり、卵をのせたり、カレーをつけたり、そばは世界中で食べられていて、自由な食べ物です。
ところが、日本では、そば自体の味や香りを大切にするだけではなく、食感やのどごしをよくするために、麺にする工程までにも大変な労力をかけます。
そばの生産者の方は、おいしい玄そばを作るために、畑の土を作ることから始めます。
【先日、千葉県のそば栽培農家の上野さんからお手紙をいただきました。
三月から、土づくりを始めたそうです。
秩父でも、若いやる気のある情熱を持ったそば栽培農家の方と、いつかめぐり合える日が来ることを夢に見ています。】
製粉会社は、全国の生産者の方を訪れ、おいしい玄そばを探して、それらのそばを挽きたてで出すために努力します。
さらに、石臼を挽く速度や、ふるい分けをすることによって、その会社の個性を出すそばを製粉します。
私のようなそば打ち、蕎麦屋は、とてもめんどくさい”そばを打つ”作業のために、毎日毎日そばを打ち続けて、技術を磨いています。
時間をかけてだしをとり、寝かせておいたかえしを使って、つゆを作ります。
「玄そば」にこだわり、「水」にこだわり、「だし」にこだわり、「かえし」にこだわり、「薬味」にこだわり、「器」にこだわり、見た目の「美しさ」にこだわり、研ぎ澄まされた技術を競い合って、一枚のそばを出します。
一枚のもりそばができるまでに、どれだけ手間暇がかかっているのかが、わかってもらえると思います。
そばを冷やして、もりつゆを冷やして、そばを二、三本つまんでつゆにチョンとつけて、ズルズルっとすすります。
そばの香り、だしの香り、しょう油の香りが鼻から抜けていった後、うま味が口の中に広がります。
口の中でかみしめていると、それらが口の中で”マリアージュ”して、そば独特の食感やのどごし、そして甘味と重なって、まさしく「蕎麦」を感じます。
先日、勉強しましたが、口の中では味や香りが増します。
鼻で感じる「たち香」ではなく、口で感じる「あと香」を意識してみると、このもりそばの食べ方が一番合理的に感じます。
さらに、わさびをチョンとのせてすすると、わさびの爽やかな香りが鼻から抜けていきます。
塩を少しのせてすすり、かみしめていると、そばの甘みをさらに強く感じます。
日本人の「食」に対する美学が詰まっている、繊細で美しい食べ物。
それこそが「蕎麦」の魅力です。